Vol.1
ツタンカーメンのカメオ
グッドウィル 末永 富士夫です。
このコーナーでは、私の見たり聞いたり感じたりした色々な事のお話を、少しずつではございますが語っていこうと
思います。お付き合い頂けましたなら幸いです。
そのこけら落としは、ロンドンでツタンカーメンカメオと出逢った時のストーリーです。
毎週金曜日の早朝より開催されるバーモンジ—マーケットを散策してブレックファーストを摂った後、高級アンティークショップが立ち並ぶニューボンドストリートへ足を延ばしました。
先ずワツキでファベルジェの作品を堪能して、次にS.J. Phillips へ向かいました。ここはアンティークジュエリーと銀製品のフルアイテムが、所狭しとどっさり並んでいる100年以上の歴史を持つ店で、世界中のお金持ちがわざわざ訪れる、伝統と威厳に満ちたアンティークショップです。
私はまるで博物館のようにずらっと並んでいる沢山のアンティークジュエリーを、端から順番に一つひとつ舐めるように見て行きました。
そして2番目のショーケースを過ぎて、3番目のショーケースに目を移した途端、その中に鎮座している一つのカメオペンダントの前で、目がくぎ付けになり動けなくなってしまいました。
そのカメオのモチーフは何とツタンカーメンで、それも白い背景にカメオとして隆起している部分はブラックです。
しっかり目と目が合って離れられません。
気を取り直して、先ずはとにかくケースから出してもらい、手に取ってみました。全体像をじっくり見た後、細部に至るまでルーペで隈なく見て触れてみると、さらに引き込まれていくのを感じます。
取り巻きのダイヤモンドを受けているゴールドの羽は、一つ一つ独立していて、更に黒いエナメルで淵取られています。少し遠目で見てみると、ぐるっと翼が一周して羽ばたいているようにも見えます。
これはきっと途方もない高価な品に違い無いだろうと思い躊躇しましたが、勇気を出して値段を聞いてみました。その答えは、勿論いつも買い付けをしている商品とは桁違いではありましたが、最初に予想したべらぼうな金額ではなく、「えっ、本当に?」という数字でした。 とは云うものの、そうは簡単に受け入れられる金額ではありません。
アンティークディーラーをしてかなりの数のアンティークジュエリーを見て来ましたが、こんな感覚を味わったのは初めてでした。このカメオを、もうここに置いては帰れない、という気持ちになってしまい、ついに、思い切って手に入れる決心をしました。
フレームの裏側にはペンダントとして使用する為の金具が付いているのですが、
ブローチとして使用する為のピンを止める事が出来るネジ穴があります。
そこでこれに合わせてネジ止めが出来るブローチ用のピンを作成して貰うことにしました。本来は付いていたに違い無いパーツです。
1週間後に再び訪問して見てみると、手作りのネジで可愛らしいピンが留まっています。そのネジ専用のドライバーとオリジナルボックス付きで。 流石ロンドンの一流店です。
これでやっと私の元にカメオがやって来ました。 仕事でこんな感動を得られるなんて、本当に幸せです。
このブラックツタンカーメン カメオブローチは、女性だけでなく男性にも使って頂ける超レア物の逸品です。
上野の森美術館で開催のツタンカーメン展にてツタンカーメンのマスクを見ましたが、まさにその表情です。
私の個人的な感想では、このカメオの方が厳かな印象を醸し出しているように感じます。